ゴセシケラボ

合成神経細胞群塊研究所電信網分室。嘘。文庫本とか漫画とかアニメとか。あと『セブンズストーリー』。

感想の話

佐藤賢一『チャンバラ』
久々に買ったハードカバー。佐藤賢一宮本武蔵を描くとか、そんなん文庫化されるまで待ってられるか。
めちゃくちゃ面白かった。
ただ、「殺気を相手に向けて飛ばしてフェイントにする」というのはまあ現実の剣術でもありそうな話だけど、「物理的な威力の“気”をぶつけて人を吹っ飛ばす」と来たらそれはさすがにマンガのリアリティライン。ムサシ絶体絶命の瞬間に“時淀み”も起きるので、中盤以降の脳内映像はほぼ『衛府の七忍』だった。ざまたれが。

月村了衛『機龍警察 未亡旅団』
面白かった。
「警察✕パワードスーツ✕国際犯罪」という異形の方程式から算出される骨太のエンターテインメントは今作も絶好調。ネトフリは『機龍警察』シリーズをドラマ化すべき。
で。
この『未亡旅団』のひとつ前のお話が『暗黒市場』なんだけど。
『暗黒市場』で主人公を務めるのが、金髪碧眼のイケメンロシア人、ユーリ・オズノフ。セブスト脳の持ち主としては、あの二人がフュージョンしたのかと思わずにはいられなくて。
さらにこの『暗黒市場』、ユーリ・オズノフがフィジカル、メンタル両面でがっつり虐め抜かれるお話なので、まあ確かにイケメンにはそういう方面の需要があるよねえという主旨のネタを前のスマホにメモっておいたんだけど。もうサルベージできねえしなあ。

『ロボット・アップライジング』
創元のアンソロジー。AIロボット反乱SF傑作選。
「AI」に「反乱」とついてるのがミソで、ほとんどの作品で人間はひどい目にあっている。最高。

ディアナ・レイバーン『暗殺者たちに口紅を』
面白かった。
暗殺組織〈美術館〉のバックボーンはいかにもありそうなリアリティだし、主人公たちの造形も魅力的。毎度おなじみの感想でお恥ずかしいけれど、映画とかドラマの原作によさそう。

S・J・ローザン『その罪は描けない』
〈リディア&ビル〉シリーズ最新作。
面白かった。
今回は現代美術業界が舞台で、登場人物のほとんどがエキセントリックというかヤベえ奴ばかり。お話の展開も面白いし、連続殺人事件ではあるけれど陰惨な描写も少なく……いや少ないかホントに? まあそのへんはともかく読後感はホッと心休まる感じ。

ドン・ウィンズロウ『陽炎の市(まち)』
三部作ものの第二部。
面白かった。
命懸けの逃避行で心身をすり減らす主人公一行。しかし追手の側にも不協和音が生じており、やがて事態は大きく展開し……。
というわけで今作も迸るウィンズロウ節。先を読ませない展開に巧みな描写、映画の都ハリウッドで現実と虚構が交錯し、最終段はほとんど神話めいていて圧巻。
ウィンズロウは次巻の三部作完結をもって作家を引退するとの事だけど、いやいやそう簡単にやめられるものじゃないのでは。

『暗鬼夜行』と『息吹』は、まだ未読。
マンガの感想もまたおいおい。